当サイト収録作品の続編です。
緑轟前提。予めご了承ください。
TO DREAM/上
多忙な父が久しぶりに自宅で夕食を摂るというので、入院し続けている母の代わりに台所に立つ姉を手伝った。皿を人数分出したときに「あら、焦凍も食べるの?」と、姉が驚いたのが、むしろ意外に思えた。
「ガキの頃じゃあるまいし、メシ抜きの刑にされるようなイタズラをした覚えもないぞ」
「だって、焦凍がお父さんと一緒にご飯食べるなんて、いつぐらいぶり? いつもみたいに、部屋にこもって食べるんだと思ったのに」
そう言われてみればそうだったな、と思う。母と話した成果か、緑谷出久の影響か……偉大すぎる(そして、ずっと憎んでいた)父・エンデヴァーへのわだかまりが小さくなっているような気がする。ヒーローネームや職場体験先も、肩の力を抜いてストンと決めることができた。
最近、あの夢も見ない。むしろ、あの記憶が事実だったのか、別の記憶と混同して作り上げた『悪夢』だったのかすら、今となってはどうでもいいことのように思える。
「来週から職場体験だって言ったろ。あの人と食事をするのにも、慣れておかないと」
「なんか、焦凍変わったね。いいお友達ができたのかしら。それとも彼女?」
轟焦凍はそれには答えず「姉さん、西京焼き焦げてる」と、ボソッと指摘した。
学祭や体育祭などの学校イベントでカップルが成立するのは、よくある話だ。
今まで目立たなかった生徒が活躍して突然モテだしたり、こっそり抜け出してふたりの思い出を作ったりするのも、甘酸っぱい青春の1ページ。それは「個性」と呼ばれる特殊能力を持つ「ヒーロー」達を育成する雄英学園でも、変わりはない。
しかし、今年の一年生(特に女子)の間で密かに噂になったのは、挑発的な選手宣誓と圧倒的爆破力で優勝した爆轟勝己でも、無限の可能性を秘めた能力を披露した常闇踏影でもなく、第1ラウンドではトップを飾ったものの、トーナメント戦であっさりと消えた緑谷出久であった。
「ちゃんと、皆には『違う』って言ったのよ。体育祭でお互いの本音をぶつけあったから、多少気心が知れただけだ、って」
クラスメートでもあるカエル少女、蛙吹梅雨は申し訳なさそうにそう言って、頭を掻いた。
「でもほら、相手が相手でしょ? カッコイイって一目惚れした女子もたくさんいたのに、告白した女子が全員玉砕したもんだから、実は恋人がいるんじゃないかしら、って」
「確かに、轟君ってカッコイイよね。背が高くてスタイルもいいし、個性も強力で見映えするし、性格はクールでちょっととっつきにくいかもしれないけど、それはいろんなものを背負っているからであって、本当はすごくいい人だし」
「なんか、愛があるわね」
「そういう解釈?」
「ごめんなさいね。女子ってホラ、ボーイズ・ラヴとか好きだし、他の女に盗られるぐらいなら、いっそ……って思ったりするものなのよ。それに、轟君と緑谷君の組み合わせって『ギャップ萌え』っていうのかしら? 身分違いの恋って感じで」
えーえーどうせ向こうは優等生、僕は「無個性」のスクールカースト最下層ですよ。毛並みが違いますよ。成績もルックスも、何もかもが不釣り合いですよ。でも、そんなにハッキリ言わなくたって……と、緑谷はがっくりと床に手をついて、いわゆる「失意体前屈」の姿勢になった。
「それとも、他に好きな子とかいるのかしら?」
「えっ」
緑谷の脳裏には麗日お茶子の姿が浮かんだが、ここで彼女の名前を出すわけにはいかない。いや、麗日に対する気持ちだって「恋」かと改めて考えれば「キスしたい、抱きしめたい」というよりは「ヒーロー目指して頑張る姿を応援したい」という友情に近い。
緑谷がもじもじしていると、それをどう解釈したのか、蛙吹が「じゃあ、いいじゃない」と決めつけた。
「いいって、どういうこと?」
「大丈夫、私は応援するわよ」
それを麗日に対するものだと思い込んだ緑谷は、感激気味に「あ、ありがとう!」などと言いながら蛙吹のベタつく手を握った。緑谷が、先ほどの会話を反芻して、己の対応の間違いに気付いたときには既に、蛙吹はピョコピョコと歩き去っていた。
案の定、鎮火どころか大炎上しているようで、しまいに緑谷は職員室に呼び出しを食らってしまった。恐る恐るドアを開けると、担任の相澤消太が自分の前に来るようにチョイチョイと指で招いて「あくまで実力主義っていうか、あまり生徒の素行にとやかく言わないのが、俺の教育方針なんだよね。非効率的だしさ。でもまぁ、一応」と、面倒くさそうに言った。
「そ、そこう!?」
相澤の除籍指導回数はレジェンド級だ。去年は1クラスまるごと除籍したともいう。まさか、ここで除籍処分を受けてしまうのでは……と、緑谷は顔面蒼白になる。でも、僕が何をやらかしたっていうんだろう。体育祭で何かミスした? それとも、僕みたいな劣等生はやっぱり雄英生として相応しくないとか? 足までガタガタと震えてきた。
そんな緑谷をしばらく「ぬぼーっ」とした表情で眺めていた相澤だったが、やがて頭を掻きながらのっそりと席を外した。
「あーやっぱ、こういうの苦手だ。ミッドナイト、パス」
代わりに、露出の大きいコスチューム姿のミッドナイトが相澤の椅子に座り、悠然を足を組みながら「あのね、緑谷君。轟君と仲がいいのは結構なことだけど……ちゃんとラバー使ってもらってる?」と、言い放った。畳み掛けるように、豊満な胸の谷間から小さな個装パッケージを引っ張り出し、緑谷の鼻先に突きつける。中身は避妊具だった。
「なっ、なな、ななな……っ!?」
「男同士でも、ちゃんと使わなくちゃダメよ。緑谷君は気が弱いから、中々ハッキリ自己主張できないかもしれないけど、ヒーローにとっては、健康管理っていうか、自分の体を守ることも大切なことなんだから、そういう時は遠慮せずに言うのよ」
純朴な緑谷にとって、このようなアイテムは都市伝説か文献上の存在で、受け取ってもどうしていいのか分からず、オドオドするばかりであった。そういえば、漫画なんかで、こういうのを財布から取り出すシーンがあるよな……と、かろうじて思い出してポケットをまさぐったが、それを見とがめたミッドナイトが「財布はダメよ。十円玉の銅に反応して、ゴムが劣化しちゃうから」と、声をかけた。
「じゃあ、定期入れの方がいいのかな……って。あのっ、もしかして、これを渡すために僕、呼び出されたんですか?」
「相澤先生は、雄英生として衿を正して風紀を乱さず、どーのこーの……って説教するつもりだったんじゃないかしら。ヒーロー科は何かとやり玉に上がるのよ。ただでさえ、体育祭直後で大いに注目されているんだし、普通科やサポート科の子たちの手前もあるし。でもまぁ、私個人としては青春、大いに結構! って考えだったりするのよね」
「そ、そうですよね。その、気をつけます!」
「あーそれと、ラバーの使い方分かる? 教えようか?」
「えっと、その、多分、大丈夫です!」
ぎくしゃくと一礼して、緑谷が職員室を出ていく。
ミッドナイトは椅子の背にもたれながら「否定しなかったわね、あの子」と呟いて、優雅に足を組み変えた。オールマイトが「フォオオオオ! と、ということは、本当に緑谷少年は、轟少年とそんな仲に!?」と、ガクブルしている。
「思ったよりあっさりラバーを受け取ったしね。使うような仲じゃなかったら、要らないって言いそうなもんでしょ? かといって、あの子が『オンナ』になった匂いもしないのよねぇ、何故か。こういうのには属性上、敏感なつもりなんだけどなぁ」
「そ、そうなのかね?」
「だから、あのふたりは放っといても大丈夫だと思うけど。轟君の方にも、念のため確認してみる? さすがにあっちは下手に騒ぐと『保護者』からクレームがつくだろうから、あくまでこっそりと、ね」
「わ、私が、かね!?」
「元はといえば、あなたが『デートしてた』とか言い出したんじゃない。確認するのがイヤなら、代わりに、クレームがついたときの応対を担当してもらうわよ」
「かはっ、それは困る、非常に困るッ!」
息子の名誉を汚されたと怒髪天を突いているエンデヴァーを想像して、思わず吐血してしまったオールマイトであった。
教室で声をかけたら、また皆に冷やかされそうだし……と危惧していたので、轟がトイレに向かったのを見計らって(かつ、タイミングを巧妙にずらして)、自分もトイレに向かった。
用を済ませて出ようとする轟に、すすっと近寄って「変な噂になっちゃって、ごめんね」と囁いた。
「そうか? キャーキャーうるさいのが減って、悪くはなかったんだがな」
轟は、ケロリとした顔で言ってのけた。元々、ヒーローになることで頭がいっぱいで、恋愛沙汰などには興味がないのだ。緑谷は「あ、あははは」と、乾いた笑いを漏らすしかなかった。
「別に『そーいうこと』にしたところで、特別に何かする必要もないんだろ。ヒーロー活動に専念できて、いいじゃないか」
そうなんだよね、そうなんだけど……と、緑谷がブツブツ呟く。僕は今までモテたことなんて無いから、モテて困るとか迷惑だとか、そんな贅沢な感覚、到底理解できないや……と、フラフラしながらトイレを出たところで「あ、いたいた、緑谷さん!」と声をかけられた。
「良かったな、緑谷。女子からご指名だぞ」
「イヤな言い方しないでよ。ほら、トーナメントで飯田君と当たった、サポート科の発目さんだよ。騎馬戦で一緒に組んだんだ」
駆け寄ってきた猫目の少女、発目明が、開口一番「WAO! 彼が噂のダーリンさんですか!」と言い放ち、緑谷は先ほどの職員室での話を思い出して青ざめた。
「ダーリンって何……ホントにサポート科にまで噂が広がってるの!?」
「いいえ、今のところは、私の情報網に引っかかったばかりです。サポート科では、高度な情報戦略も必修科目ですからね。この話を広めたくないのであれば、それ相応の対応も可能です。逆もまた然り、ですが」
「そ、そうなんだ?」
「炎上と鎮火、クチコミの情報コントロールのモデルケースとして、非常にいいサンプルになります」
サポート科はこんな思考回路の子ばっかりなんだろうかと呆れるが、悪気はなさそうなのが幸いだ。いや、悪気がないのが余計に厄介なのか。
「鎮火の方向でお願いします……ところで、わざわざこんなとこまで、何の用?」
「実は、ですね。緑谷さんに、私のベイビィちゃんをプレゼントしようと思ったんです」
轟は「ベイビィちゃん?」と訝ったが、緑谷はそれが彼女の発明品の愛称だと知っているので、抱えている紙袋を見て「その中身のこと? どんなビックリアイテムなの?」と尋ねた。
「フフフ、それは、見てのお楽しみです! 必ず、ダーリンさんとふたりっきりの時に開けてくださいね!」
そう言い残すと、発目はニッコリ笑って駆け去った。
「ど、どうしよう?」
「帰りに、お前んちに寄ろうか?」
「う、うん。そういえば母さんは近所でお茶会とか言ってたから、誰もいないし、ちょうどいいかも」
アレ、今の会話、変なお誘いみたい。気をつけるようにって、ミッドナイト先生にも言われたばかりなのに……と、緑谷は頭を抱えた。
「なんだ、それ」
発目の『ベイビィちゃん』には、ビニールでパッキングされた包みが複数個、詰まっていた。試しにひとつ開けてみると、やたら布の少ないパンティやらキャミソールが出てくる。他の包みも、レースなどが透けて見えるところから察するに女物の衣類なのだろう。
「多分……僕が女役だって誤解してるんだと思う」
「これ、着た方がいいのか?」
轟が真顔でレースのパンティを広げている。その微妙にシュールな光景に、緑谷は正直、笑っていいのかどうか迷った。
「えーと。僕用にあつらえてるとしたら、轟君だとサイズが合わないと思うよ」
「そうか」
轟は素直に頷くと、パンティをビニール袋に戻す。
いや、ちょっと待って。もしかして今の会話の流れだと、轟君が女役って言ってるようなもんじゃないか? しかもナチュラルに受け入れられちゃってる? と、気付いて緑谷は焦った。
「ん? どうした?」
「いや、その……こんなのだって分かってたら、わざわざ来てもらったりしなかったのに、って」
「ふたりで見ろっていう指定だったから、仕方ないさ。それに女物の服なんて、姉貴のを見慣れてるから、別に……あ」
他の衣類も片付けようとして、轟の手が止まった。そこにあったのは、小さなパッケージとボトルであった。ポーカーフェイスの轟もさすがに呆れた様子で「準備万端だな」と呟いた。
「なっ、なななっ……! ホント、そういうつもりじゃなかったのに、その、ごめんなさい」
「そうかよ。つーか、お前が謝ることでもねーだろ」
ボソリと呟くと、轟はそれを衣装と一緒に紙袋に突っ込んだ。
会話が途切れると、窓ガラス越しに近所の子供たちが騒ぐ声が聞こえてくる。気まずさを覚えた緑谷が「轟君、退屈じゃない? そうだ! せっかく来たんだから、テレビの録画見る? こないだ歴代ヒーローの特集やってたんだよね」と、ベッドから立ち上がりかけたが、轟は「別に、いい」と呟いて、緑谷のシャツの裾を掴んだ。
でも……とグズる緑谷を尻目に、轟はまるで自分のベッドのようなくつろぎっぷりで寝転がると、ふと思い出したように「こないだ、父さんと久しぶりに食事した。だから何だってこともなく、特に何もなかったけど」と、ボソボソと話し出した。
「そ、そうなんだ。お父さんと仲直りしたんだ。良かったじゃん」
「仲直りっていうのかな、こういうの。こっちが今まで意識しすぎて、視野狭窄になってたせいもあると思うけど、向こうもなんか、憑きものが落ちたっていうか、いつもと様子が違って見えてさ。あまりにもアッサリしてて、あまり実感がないんだけど……お前のおかげもあるかもな」
「ともかく、轟君は前に進んでるってことだよね、すごいよ」
「そこで、すごいって言葉を選べるお前が、すごいな」
そういえば体育祭で大怪我したときのギプスは外れたんだな、と思いながら緑谷の手に触れる。まだ絆創膏と包帯に包まれているけど、痛みは残っているんだろうか。こないだはギプスのせいであまり動けなかったんだっけ。つまり、今なら……と、指でなぞっていると、妙な気分になってきた。それは緑谷も同じだったらしく「窓開けて風を入れようか」と言い出した。
「室内の空気を入れ替えたら、スッキリすると思うんだ」
だから手を離してと言いたいのだろうとは察することができたが、なぜかそれに従う気にはなれなかった。
「それよか、特別に何か、してみるか?」
囁くと、緑谷の顔がみるみる赤く染まった。
汗ばんでいるシャツが肌にまとわりついて、やけに脱ぎにくかった。緑谷が、最後の砦のようにトランクスを脱ぐのをためらっているので、布の上から膨らみに触れてみると、じっとりと湿って熱を帯びていた。そのまま先端をまさぐると、クチュクチュと粘液質の音がして、それが妙に食欲にも似た衝動をそそった。唇を舐めながら相手の腹の上に屈み込もうとしたら、額をおさえるようにして、拒まれた。
「ちょっ、汚いからダメだよ、そんなのしちゃ」
「こっちは、スマッシュ寸前みたいだけどな」
「その……手で、いいよ。僕も、してあげるから」
お返しに触れられ、握り込まれる。互いの顔の位置が近かったので、自然と唇が重なり、舌を絡めていた。前よりちょっとだけ上手になっているような気がするが、もしかして「前回の反省を踏まえて研究」とかしたんだろうか。緑谷はそういうこと、やりかねない性格だけど。
「轟君、気持ちいい?」
ぞろりと首筋を舐め上げられ、耳元で囁かれて、背筋がゾクゾクする。緑谷の下着を剥ぎ取りながら「手じゃなくて……欲しい」と、熱っぽく返した。敢えて何を、とは言わなかったが、意味は通じたようだ。
「じ、じゃあ、ゴムつけなきゃ。男同士でもちゃんと使いなさいって、ミッドナイト先生が」
「は?」
あのアバズレ、こんなオボコいヤツに何の指導をしてるんだ。いくら18禁ヒーローとはいえども、一応教職だろうが……と呆れるが、これも『生徒の健康管理の一環』と捉まえれば、アリといえばアリなのかもしれない。
「先生から貰ったの、確か定期入れに……あ、さっきの紙袋にもあったよね。ローションも入ってたし、アレも使った方がいいのかな」
緑谷が紙袋を引き寄せようと手を差し伸べたのを見て、何故か不快感を覚えた。オンナから貰ったモノを使うぐらいなら、ナマでもいい……ハッキリとそう自覚したわけではないが、男の腰を挟んでいる両脚に力を込めて、引き寄せていた。
「ちょ、待って待って、手が届かないよ」
「嫌だ」
我ながらおとなげない態度だとは思ったが、緑谷が相手だと、それが自然な姿のような気がした。気負いも衒いもなく、弱い部分を曝け出すような。
「ちゃんとゴムしないと、君を傷つけちゃうかもしれないんだから、ね?」
子供をあやすように囁かれたのが、かえって轟を意固地にした。腕を引っ張って体ごと引き寄せ、強引に唇を吸う。
「いいから、さっさとしろよ、ノロマ」
「だから、君のためなのに」
腰を押し付けて揺すると、互いの汗と分泌物が音を立てて混じり合い、ぬるぬると滑った。
「いいの? 痛かったら言ってね?」
「痛いに決まってるだろ、挿れるとこでもねーのに」
「じゃ、コレやめる? いいよ、僕は」
「わかってねーな、この、バカナード」
かっちゃんには昔からよく口癖のように罵られてるけど、轟君までナード(底辺野郎)呼ばわりなんて酷いよ、と緑谷が言おうとした矢先に、先端がぬるりと入り込んだ。
「あっ、ちょっ……まだ……!」
ゴムしてないし、ローションとかで濡らしてないし、多分、指とかで入口をよくほぐしてからじゃないと(我ながら情けないサイズでも)さすがにキツいと思う、のに。
「くっ、あ……ンッ」
「大丈夫? 痛い? 無理しないで」
痛いに決まっている。狭い器官が内側からメリメリと裂けていく、嫌な感触がダイレクトに伝わってきている。足が攣るのではないかと心配になるほど、爪先まで力がこもっている足は、しかし咥え込んだ男の胴に絡み付いて離そうとはしない。
「本当にいいの? 動くよ?」
歯を食いしばったまま、コクンと顎を動かす。もしかしたら、彼はこんなセックスしか知らなかったのかもしれないと、ふと思い当たった。一方的に奪われるような、痛みに耐えるだけの、交合……それじゃダメだよ。ちゃんと全部、優しくて気持ちいいセックスに、上書きしてあげなくちゃ。
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