う に こ う る/上


この街に再び帰ってきているだなんて、思いもしなかった。
檜皮色のインバネスをマントのように羽織った姿は初めて見たが、あのひょろっとした長身に鳥の巣頭、さらに丸い色眼鏡という独特の風貌は、間違えようもない。それでも、おおいと声をかけるのが一瞬ためらわれたのは、その傍らに女がいたからだ。

女はどちらかというと小柄で、髪を島田髷に結っている。桜色の着物は一見地味だが、その小紋、良く見れば細かい柄が全面に入っている。顔は良く見えなかったが、襟足からすんなりと伸びた首筋と裾から覗く足袋の白さに、相当の別嬪であることが察せられた。

「坂本さんの隣の人、奥さんかなぁ?」

「ばぁか。島田髷は未婚女性が結うんだぜ。奥さんだなんて言ってみろ。ぶん殴られるぞ」

「へぇ?」

「若衆髷を模して遊女が始めたっつー髷でな。まぁ、色っぽいもんだが……って、最近の若いのは、髷なんか結わないから、知らんか」

「そんなん……銀さんに最近の若いのはって言われてもねぇ。銀さんだって結ってないくせに」

「わーるかったな。天パは体質だから、髷結えねぇのは仕方ねぇんだよ!」

「あれ、銀さん、ちょっ……どこに行くんですか? 買い物の途中なのに」

「あん? ああ、ちょっとからかってくらぁ。新八、ひとりで行って来い。持って帰れねぇ量でもねぇだろ」

「そんなぁ! トイレットペーパーおひとり様2パックまでっていうから、わざわざ来てもらってるのに!」

「特売なんか、またいつでもやらぁな」

坂本は……今度いつ地球に戻って来るか、知れたもんじゃねぇしな、という台詞はあえて飲み込む。声をかけて……どうしたいのかは、自分でも分からなかった。
この間、置き去りにされたことの恨み言でも言うのか? それとも、もう一度抱いてくれとでも?

いや、隣に女が居さえしなけりゃ、ここまで動揺もしなかったろう。どうせ地球と他の星との交易を生業にしているのだから、地球に戻ってくるのは当たり前のこと。特に用事がないのであれば、ああ、また戻ってきているんだな……と思うだけで通り過ぎたって、なんの不思議もなかった筈だ。

ふたりはいかにも睦まじげに連れ立って、茶屋の並ぶ掘沿いの道を散策している様子だった。いや、実際にデートなのだろう。一度、団子の店に立ち寄って一串ずつ買い、食べながら歩いたりもしていた。これは連れ込み宿にでもシケ込むんじゃねぇのかな、と銀時は自分も屋台で大量に買い込んだみたらし団子をパクつきながら考えている。
けっ、この前あんだけ熱心に俺を口説いておきながら、どの面さげてそのアバズレと乳繰りあうつもりだ?
そうしている内に、不意に坂本がインバネスをバッと翼のように広げるや、女の身体を包み込んだ……かと思うと、すっと角を曲がって路地に入って行った。あっと思う間もなく見失いかけ、慌てて後を追う。あの角の向こうには春宿がいくつもあった筈だ。一体、どの店に入りやがるんだか……思わず「辰馬ッ」と声が出ていた。

「おお、金時か。久しいの」

振り向いた坂本は、いざ女を春宿に連れ込もうという場面を目撃されたにも関わらず、なんの悪びれもせずにケロッとした顔で受け答えてみせた。だが、坂本のインバネスに包み込まれて、その脇にそっと寄り添っている女の瞳は大きく見開かれ……次第にきりりと吊り上がった。

「おぬし……坂田銀時か。何のつもりで邪魔立ていたす?」

何故、俺の名を知っているのだろう……と疑問に思う間もあらばこそ、インバネスの中から飛び出した女は銀時の襟首を両手で引っ掴み、捻り上げた。小柄な体からは想像もつかない思いがけない怪力で、どちらかといえば大男の銀時の足が、宙に浮く。

「貴様、わしらのせっかくの逢瀬を……っ!」

「うーん……出直すかのう? せっかくだから、三人で表の茶屋で飲まんか?」

坂本はその女の暴挙をとめるでもなく、困ったようにそう妥協案を出したが、それがますます女の神経を逆撫でしたようだ。

「坂本さん、また、わしに何カ月も待ていうのか?」

「仕方なかろうがぁ。そう、盛りのついた猫のような声で吠えるな。その手を離してやれ、窒息死するぞ」

「死んだら宇宙葬にしてやる。太陽系外に捨てたら、屍体が運悪く見付かるにしても数百年は先の話じゃ」

「真顔で言うな、本気ば思われるぜよ」

「本気じゃ」

女の細腕にじわじわと力がこもる。こいつはただの遊女や町娘じゃねぇ……と銀時が酸素欠乏で薄れかけた意識の中つぶやいていたら、不意に地面に叩き付けられるように手が離された。

「……うぇっ、げほごほっ……このアバズレゴリラっ……!」

地面に這いつくばるようにして咳き込んでいると、銀時の髪がぐいと女に掴まれた。

「アバズレで結構じゃ。わしがどんな思いで長らく堪えておったか、そしてこの逢瀬をどれだけ楽しみにしていたことか、貴様には分かるまい……それをぶち壊してくれた罪、身体で償ってもらうぞ」

そう囁くや、そのまま凄まじい力で引っ張られた。

「ぐあぁあああっ! 髪の毛が抜ける、禿げるっ!」

銀時が泣き喚くのも構わずに、ずるずると引きずって、春宿の暖簾をくぐる。帳場の横の壁には、客間の名称とその絵図が書かれた案内板があり、女はちろりとその一覧を見るや『マニアックアイテムたっぷり!オトナのお仕置部屋/牡丹の間』の木札を毟り取るようにして、階段を登り出した。

「いでででっ! ちょっ、ハゲる、抜けるっ! マジで髪の毛ヤバイからっ! というか、階段は勘弁してっ!」

あまりに悲痛な叫びに、こういう場所柄、お客には無関心な筈の帳場の遣り手婆ァが、不審げに顔を出したほどだ。

「ああ、ちょっとした痴話喧嘩じゃき、気にせんでやっちょくれ……それはそうと、牡丹の間は三人、いけるのかのぅ?」

坂本は殊更にのんきな声で尋ねながら、婆ァの前に前金の小判を投げ出してやったものだ。



髑髏の彫刻が施された鉄製の柱に深紅の羽布団という悪趣味極まる寝台の上に、革の長靴も脱いでいない銀時を放り出すと、女……坂本率いる快援隊の副官である陸奥が、むしゃぶりつくように覆いかぶさって来た。

「図体に似合わず、可愛らしいへのこじゃな」

白魚の指が、紺股引と下履きをずり下げさせると、軟らかいままの男根を掴み出す。いかにも食欲がそそられたという表情で己の赤い唇の端を舐めてみせると、有無を言わさずにそれを根元まで口に含んだ。舌と頬肉の裏全体で揉みしだくようにして、吸い上げる。

「可愛い言うな、謙虚だと言え……って、うぁああああっ、なにっ、ちょっ、おまっ……辰馬ァ、これ、やめさせ……ひッ」

「無理じゃき。陸奥にスイッチが入ったら、わしにもどうにもこたわん」

「無理って、おめぇの部下だろうがよぉ!……アッ、うンッ……」

尺八を吹く粘液質な音と生暖かく包み込む感触に圧倒され、ぶん殴って引き剥がそうにも腕に力が入らない。普通の男なら、そこでムクムクと勃ち上がるところだが、銀時は力なく項垂れたままだった。

「わしでは不満か? だが、かしらには触らせんぞ」

いつもの聡明で沈着な澄まし顔はどこへやら、ぎらついた目で見下ろすと、ぺろりと舌を出して、くっついたらしい縮れた毛を指でつまんで捨て……やおら己の小袖の衿を押し広げて胸乳を剥き出しにした。
やや小ぶりだがツンと上を向いた張りのある形をしており、遊女よろしく乳首にも紅を差しているのか、その頂きが真っ白い肌の中で際立っている。
銀時が「おおっ」と呟くのが聞こえたのか聞いていないのか、椀を伏せたような双丘をさらに両手で寄せて谷間を作ると、そこに男根を挟み込んだ。

「うわっ、おまっ……視覚的には嬉しいけど……そんなに強く挟むと潰れるッ、チンコが圧死するうっ!」

「これでも勃つ気配がないな、この萎え魔羅め」

「そうじゃなくて、その、体質的にというか、持病の糖尿でその……病弱なんだから、もっとソフトに扱って欲しいんだけど」

「なんだ不能なのか」

サクッと言い放つと、上体を起こす。

「だが、せっかくのへのこ、小便を垂れるだけでは勿体ないだろう」

片手を己の結い上げた髪に伸ばすと、簪(かんざし)に触れた。髪からそれを引き抜くと、結った髪がほどけて、はらりと肩に落ちる。簪には赤い大きな珊瑚玉がついており、串の部分は滑らかな金属製だ。ニ本で対になっている簪の串の部分の一本を折り捨てると、横ぐわえにした。
両手で竿を包み込むようにして強引に上を向かせた。勃起はしていないものの、散々弄ばれて汁を垂れ流している鈴口が、黒々と口を開けている。

「それだけ濡れておれば、充分じゃな」

片手を竿に添えたまま、くわえていた簪を指に挟み込む。

「ちょっ、あのっ、アンタ乳ほりだしたままで何を……タンマ、ストップ! 何ィ、何すんのちょっとオイいいいいっ!」

寝転がったままの体勢で弄ばれるままになっていた銀時だったが、さすがに何やら怪しげなことをおっぱじめるつもりらしいと悟って、身体を起こした。片手で陸奥の肩を押して制そうとする。

「さすがに騒ぐと突き抜けるき。おとなしゅうせんかい」

ギョッとして固まってしまった銀時の目の前で、陸奥は嬉々として簪をその鈴口に近付けた。

「へのこが怯えて、ビクビクしておるぞ。ういのう。菊座に突っ込まれるのは慣れておっても、こっちは未経験とみえる」

「なっ、そんなっ……マニアックなっ……やめっ、ちょっ、ホントやめてくんない? いや頼んます拝みますからっ、マジで!」

「うふふふ……喚くと痛いぞぉ」

ひたり、と入口に押し当てると、さすがに陸奥も緊張したのか、深呼吸する。そして集中するためか軽く息を詰めると、本来受け入れる用途には使われない小さな穴に、細いその棒を差し入れた。

「ふぁっ、アッ、ンッ」

軽い痛みと共にじわっと広がる、全身の筋肉が弛んでいくような異様な感覚に、銀時は抵抗することも忘れる。両手をついて起こした身体を支えるが、その腕ががくがくと震えて、萎えそうになる。

「いい声で哭くのう」

さも楽しそうにそう呟くと、そっと抜き差しを始める。

「どんな感じじゃ? ほれ、言うてみぃ」

「どんなって、ひっ……そんなっ……無理ッ」

尿道が刺激されて、失禁を促すような切迫感があった。それはどこか射精するのを堪えるような感覚に似て、強引に快楽を掘り起こされる。竿の根元を握って支えていた女の手が、指を伸ばして陰嚢をも揉むように愛撫し始めたのが、さらにその感覚を加速させた。
意識が高みに引き上げられ、頭の奥が痺れてきて、何も考えられなくなる。思わず仰け反って喘いでいた。唇の端から唾液が溢れて伝い流れる。両手は敷布を必死で握りしめていた。

不意に手が止まった。
己の膝の間に座り込んでいる女に、懇願の視線を向ける。

「突っ込まれて弄ばれているだけで、イきそうなのか。だが、そう簡単には楽にはさせんぞ」

陸奥はククッと喉の奥で笑うと、くるっと部屋を見回した。




『オトナのお仕置部屋』の名に相応しく、全体的に黒と赤を基調にした室内には、いかがわしげな木馬だの拘束ベルト付きの十字架だの、天井から吊るすための滑車と鎖だのがごちゃごちゃと並んでおり、さらに部屋の隅には和箪笥に似た箱が据え付けてあった。
陸奥はひょいと寝台から降りると、その箱にまっすぐ歩み寄る。本体や枠は黒塗りだが、抽き出し自体はびいどろ製で、中に入っているものが見える仕掛けになっている。

「あのー……もしもし、オネーサン……これ以上、何をお考えで?」

銀時が、不安そうに尋ねる。
それに答えることなく、陸奥はザッと中身を吟味すると、幾つかの抽き出しを開けて、中に納められていた器物を引っ張り出した。

「さすがに猟奇趣味を謳うだけあって、面白いものがあったな」

「陸奥ぅ、それは有料サービスだぜよ、領収書は出んぞぉ」

「こんなもの経費で落とせるか。そういうアンタが勝手に冷蔵庫から引っぱり出して飲んじょる酒も、無料じゃなか」

寝台に戻って来た陸奥が手にしていた『面白い、こんなもの』とは、ローションのボトルと、油紙の包み……包みの中身は、黒い革帯がついた大きな張り型であった。

「え……いや、もう逢い引きの邪魔しないんで、勘弁してくんねぇ?……つか、これ、抜いてほしいんだけど」

銀時が顔面を引きつらせていた。まだ簪が茎を貫いているために、下手に動けないでいるのだ。かといって、さすがに自分で引き抜く勇気はない。

「へのこから飾り玉が生えているみたいじゃき、可愛いか。それに、もう少し遊ばしなぁ」

「遊ばせろって、えーと……その大人のオモチャで、オネーサンを満足させて差し上げたらいい?」

「わしか? そうじゃな、双頭の張り型があれば、そういう遊び方もできたか。手ぇついて、尻をこっちに向きぃ」

「ぇっ」

なんとなく、何をするつもりなのか見当がついてしまった。
ザァッと血の気が引き、すがるように坂本に視線を送るが、離れた位置にある長椅子に腰を下ろしている坂本は(今、止めたらよけいに逆上して手ぇつけられんきに、堪忍)と、片手を立てて、銀時を拝む手ぶりをしてみせただけだった。もっとも、本当に傷つけたり、命にかかわるようなことをすれば、さすがに割って入るつもりでは、一応いるのだが。

珊瑚の飾りをぶら下げたモノを気にしながら、おっかなびっくり姿勢を変える。銀時が背中を向けたのを確認すると、陸奥は己の着物の帯を解いて、一気に腰巻きまで脱ぎ落とした。その腰と太股に革帯を巻き、金具で締め上げて固定した。恥骨の辺りに人造の男根が隆々と、角のようにそびえ立つ。

己の準備が整うと、次はこちらとばかりに、ローションのボトルを手に取って、まずは掌に乗せる。女性の愛液を模した粘液は、しかし、女性のものよりも粘っこくヌルヌルした感触だった。香料でも入っているのか、甘ったるい匂いまでする。

「そういえば、おまん、甘いものが好きとか言うておったな……良かったのぅ、美味しそうじゃき」

そういうや、その掌を尻に押し付けて、塗りたくった。ひやりとしたその感触に、銀時が肩を震わせる。

「いや、いくら俺が甘党でもそっちの口では無理だからっ、甘くても嬉しくないからぁあっ!」

身をよじって逃げようとするのを押さえつけ、さらにボトルから直接タラタラと尻に降りかける。捏ね回し過ぎたのか粘液が泡立ち、濡れた音がたつ。肌の熱でぬるくなったのか、冷たさを感じなくなった頃、不意に指がにゅるりと菊座に滑り込んだ。

「うわっ、ちょっ……やめっ」

「さすが、なんの抵抗もないな。潤滑油のおかげか、それとも食い慣れているせいか」

ぐりぐりと手首を左右にひねるようにして捻じ込むと、遠慮会釈なく指で抽迭し始める。内壁を愛撫するでもなく機械的に指を捩じ込み、数を増やしていくのは、相手の快楽などは気にも留めていないせいだろう。

「これぐらい広がれば充分じゃろ」

まるで、果物か何かを検分して「これぐらい熟れれば充分だろ」とでもいうようなニュアンスで呟くと、腹腔を満たしていた指を抜く。喪失感に銀時が喘いでいると、その入口にひたりと何か……硬く、冷たいものが押し付けられた。

「尻がひくついておるぞ。珍棒が欲しいのか? だが、坂本さんのはくれてやらん。わしが許さん。おまんにはこれで十分じゃ」

嘲るように言い放つと、腰を突き入れる。ぬめりの効果か、生身のものよりも表面がつるんとしているせいか、一気に中ほどまでが押し込まれた。だが、すんなりというわけでも、楽々というわけでもない。

「がはっ……はっ……ふぁあああっ!」

悲鳴を上げながらも息を吐いて、下腹部の力を抜こうと足掻く。苦し紛れに、リンネルの敷布に爪を立てて掻き毟ると、悲鳴のような音を立てて布が裂けた。唇から溢れた唾液と生理的な涙とが、大粒の汗と共にぼたぼたと滴り落ちる。
こうなったら、締めてさっさとイって貰おう……と思って気付く。

もしかして……張り型ってことはこれ、相手はイかないってことだよな? つまり、生身では訪れる終焉が存在しないってことで……エンドレス? ということは、粘膜越しにこちらの限界を察してもらうこともないわけで。



なにこれ、このドS女が『飽きるまで』終わらないってこと?



絶望的な見通しに銀時は気が遠くなりかけるが、突き上げ始めたその痛みに、強引に意識を引き戻される。

「へぇ。この張り型は、うにこうるの角で出来ているんじゃと。珍獣の味は、どうじゃ?」

陸奥の方は、四つ這いになった尻を犯しながらも、どこかノンキな声を出しながら、片手に包み紙を持って、印刷された効能書きなどを読んでいる。

「これ、どうじゃと聞いちょる。返事をせんか」

もちろん、そんなノンキな問答に答えられる余裕など銀時には無く、がくがくと膝が震えて崩折れそうになるのだが、陸奥は紙を放り出すと、ひたひたと掌で牛でも追うように、男の尻ぺたを叩く。

「もう少し啼け。わしを面白がらせてみろ」

張り型では、実際にその肉襞の戦慄きを直接味わうわけでも、突き込み締め付けられる感触に痺れるわけでもない。ただ、悶える相手の反応を愉しみ、存在しない器物で有り得ない形での陵辱を施しているという倒錯した想像に酔う……それがなければ、突き上げるために規則的に腰を振っている姿は(それが男であれ女であれ)客観的に見て滑稽でしかない。

「ふぅむ。耳掻きと耳の穴とは言うが……思ったより詰まらんな」

「そう思うならっ……抜きやがれっ、このっ!」

「この……? なんじゃ? おまん、まだそんな口を利く元気があるのか」

さすがに陸奥もそろそろ勘弁してやろうかという頃合だったが、気が変わった。背後からその銀髪を鷲掴みにしてのけぞらせると、ぐっと腰を押し付けるようにして、根元まで呑み込ませる。開いた口から搾り出すような悲鳴があがる。その切迫した響きに「イきそうなのか」と尋ねると、首が揺れた。

「イきたければイけばいい……ああ、栓をしてるから、出せないのか?」

思い出したように、両手を腰の前に這わせてやった。相変わらず半勃ちではあるが、先ほどよりは手応えがある竿を握って、軽く摩ってやる。

「ああ、また少し硬うなった。後ちぃと頑張れば使えそうなんじゃがのう。でも無理か。ふぐりがこんなに膨らんで、はち切れそうじゃな」

手指に集中しているせいか腰の突き上げが止み、直腸への刺激が一時収まったために、銀時の意識が再び陰茎に集まる。苦痛のみを吐き出していた嬌声に、微かに鼻にかかるような快楽の響きが混じり始める。

「イイのんか。そんなにこの角がイイのんか……ふふっ」

そう囁きかけて、陸奥の口元がニィッと吊りあがった。
不意に思い出したように腰を突き上げると、背後から回した手で珊瑚玉を摘んで、一気に引き抜く。
先端から血の飛沫が飛び散った。それに一瞬後れて、白濁の液が迸る。

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

悲鳴の形に大きく顎が開かれたが、声は枯れてしまったのか、出てこなかった。

裏ブログ初出:06年10月27日
加筆&当サイト収録:07年08月27日
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