本日パフェの日

最初に「今日はパフェの日らしいですよ」と言い出したのは、山崎だった。だから、どっかでパフェのサービスやってるかもなんて言って、今日の市中見回りで見掛けたら一緒に食べませんかと来たもんだ。まあ、それに乗ったのは、別にパフェが食いたかった訳ではなく、ここ最近の暑さに昼飯がのどを通りにくかったから、たまには冷たいモンでも……と思っただけだ。

それにしても参った。見事にパフェ半額の店を見掛けてソイツを(俺は甘過ぎるのは苦手だから、マヨネーズをかけて)食い始めたら、窓から俺らの姿を見掛けたらしい万事屋がひょっこり現れて「多串くーん、血税で勤務中にデートですかぁ?」などと言い出しやがった。そういうセリフは、キチンと税金払ってるヤツが言うもんだ。

「だったら、税金払う余裕も無いカワイソーな庶民に、パフェ恵んでよ」

「断る」

「けちー・・多串くんのおこぼれでいいんだけど」

そう言いながら、勝手に俺のパフェにスプーンを突っ込んで、万事屋は自爆しやがった。ざまぁない。

「なにこれ、パフェに対するボートクだよ、パフェの日にこれは、国家反逆罪クラスだよ!ジミーくんの、ひとくちくれる?」

「あ……俺、全部くっちまった」

「え〜……じゃあ、後味だけでもいいからさぁ」

余程糖分に飢えて、前後の見境がなくなっていたのか、それともタチの悪い冗談だったのか、万事屋が山崎のあごを掴んだ。大柄な体を折るようにして、山崎の上におおいかぶさる形になる。

「ちょっ、待ってくださいよ、旦那ぁああああ!」

「ジミー君の口から冷たい糖分の匂いがするんだよねぇ」

「ぎゃああああ!副長、助けてぇ!」

茫然と傍観してた俺だが、さすがに我に返った。自分のグラスの底には、かなり溶けてしまっているが、クリームが残っている。とっさに、それをスプーンですくいとっていた。

「万事屋」

呼び掛けて振り向かせると、幸い、まだ山崎は唇を奪われてはいない様子で。
俺は、口にクリームを押し込むと、万事屋の胸ぐらを引っ付かんで、力任せに引き寄せた。唇を重ね、舌でクリームを相手側に押し込む。

「おっ……多串く……」

「くれてやったから、もう帰れ」




山崎が襲われかかったことで、俺はかなり動転して、頭に血がのぼってたのだろう。自分のやらかした事を把握できたのは、それから四半刻ほど後のことだった。

(了)

【後書き】6月28日はパフェの日らしいですよ、というメールをもらったので、通勤電車内で携帯電話を使って、SSをどこまで書けるか挑戦してみました。なんとか電車を降りる頃(21分乗車、47分下車、途中2回乗り換え)には、チューにこぎつけて、あとは駅から歩きながらエピローグを打ってました(笑)
このSSをリライトして、Dグレバージョンも書いてみましたので、よろしかったらどうぞ。
ブログ初出:07年06月28日
当サイト初出:07月08日
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