みるくしする/下
一瞬、なんでテメェ相手にと抵抗感を感じたが、ぬるりと唇を押し割って絡み合う肉の感触は(誠に遺憾ながら)快いとしか表現しようが無かった。多分それは、肌の奥に生きた熱や鼓動を感じることと、時折、息継ぎをする呼吸が頬に感じられるせいだろう。口を吸い合うだけでなく、互いの服をやや強引に剥ぎ取ると、相手の肌を欲して貪りあう。
これが、人形じゃなくて人間の感触なんだなと、甘く痺れた脳の片隅でぼんやりと考えていたら、銀時はいつのまにか身体の位置が入れ替わって、自分が仰向けに転がされていたことに気付いた。
「ちょ、ちょっと待ったァ! 俺、こっち?」
「は? こっちって、どっちだ?」
どちらともなく互いに愛撫している時にはさして気にならなかったが、いざ我に返って、腹の上に男が覆い被さっているのを目の当たりにすると、さすがにドン引いた。
「俺が、せっかく必死でオカマから守りきった貞操が」
「どうせ、こっちもイケるんだろうが」
「まぁ、そうなんだけど、なんで俺が新年早々、オーグシ君に掘られんの」
「その台詞、バットでテメェに打ち返してやんよ」
「その打ち返された台詞をさらに熨斗つけてバットで打ち返すわ」
「だったら、俺はその上に、ラッピングしてバットで打ち返すわ」
「じゃあ、俺はさらにその上にリボンかけて、メッセージカード添えてバットで打ち返すわ」
「だったら、俺は……って、キリがねーだろーがぁ!」
「わーい、副長さん、見事なノリツッコミ」
おちょくるような口調で、銀時はパチパチと手を叩いてみせたが、先ほどまでお互いすっかりその気になっていたせいで、昂っているものはこのままでは収まりがつきそうにない。
特に銀時の場合、糖尿っ気があるせいで最近いささか精気の無い愚息が、珍しくやる気をみせているのだ。永年ニートの我が子が自主的にハロワに行こうと言い出したかのごとき状況、なんとかしてやりたいと思うのが親心というものだ。
「俺にご馳走してくれるって企画でしょ。だったら俺に食べさせてよ」
「出資者は俺だぞ。誰のおかげであそこ出れたと思ってるんだ」
「ちょ、カネと権力にモノ言わせるなんて、サイテーじゃね?」
少しくにらみ合いになり、やがてふたりほぼ同時に「じゃあ、ジャンケンで」と言い出して、その声がハモった。
「後出しとか、卑怯な真似すんなよ、万事屋」
「それはコッチの台詞だ……ところで、ジャンケンポンのポンのタイミングで出すんだよな」
「そりゃそうだろーが。ガキじゃあんめぇし、馬のケツがどーのこーのと付け足して、引っ張ったりしねぇ」
「ポンの『ポ』で出すの?『ン』で出すの?」
「『ン』じゃねぇか?」
「『ン』って言った瞬間? それとも『ン』って言い終わった瞬間?」
「あ? えーと、ちょっと待て。分からなくなってきた」
「それはそうと、副長さんってさ、今、チョキ出そうと思ってる?」
「うるせぇっ! グジャグジャ訳わかんねぇこと言って揺さぶろうったって、その手には乗らないからな! ほれ、ジャーンケーン……」
今、チョキを出そうと思ってるなんていいやがるってことは俺がそう言われたらチョキを出しにくくなるという計算で言い出したに違いないから俺にチョキを出されたら困るってことで万事屋は当然パーを出そうと思っているということになるが俺がそれに気付いてチョキを出すから万事屋はその裏をかいてグーを用意しているかもしれないのでパーを出そうと思ったのですがさらにその裏をかいてチョキを用意しているかもしれないので俺はグーを出そうと思います。アレ、作文?
「ポン!」
しかし「勝った!」と叫んで、ニヤリと笑ってみせたのは、銀時であった。
「ちょ、なんでテメェがパー出してんだよ、万事屋。俺がチョキ出してくるって思ってたんだろうが」
「うん、そう思ったんだけど、チョキ出してくるよねって言ったら、チョキ以外のものを出してくるだろうから、パーを出しておいたら、最悪、あいこで済むかなと思いました。アレ、作文?」
「なんだよ! 俺のゼロサム理論、無駄だったのかよ! 三回勝負にしようぜ」
「今更。往生際が悪いよ、副長さん。侍だったら、潔く腹くくんなよ」
「ちっ」
だが、ジャンケンで決めると言ったのも自分なら、己が負けたことも事実なのだ。
「とんだ姫初めになっちまったな」
土方が諦めて肩をすくめると、そう呟いてベッドにゆっくりと横たわった。スプリングが音を立てて軋む。
「姫初め? ああ、正月だもんね。副長さんモテモテだから、とっくにヤってると思ってた」
「んな暇あるか。俺ぁずっと仕事してたんだよ」
「オマワリさん、任務ゴクローサマです」
おどけた口調で囁きながら、その身体の上に重なるようにして唇を重ねる。土方の紅い唇からは「バカヤローが」と罵る言葉が、息継ぎと共にこぼれる。それとは裏腹に、長く白い腕はゆるやかに銀時の背中へと回された。
思えば、コイツとはほぼ似たような体格なんだな。
肩をなぞり、背を撫で、厚みのある男の腰に触れながら、そんなことを考えていた。六尺はあろうかという己の長身と比べれば、大概の相方は体格的に劣る。
だからどうだ、というこだわりは無いつもりだが、相手に包み込まれる感触は妙に新鮮で、悪くはなかった。それに、これだけのガタイなら……下肢の間に割り込み、その奥をまさぐってくる指の太さや、意外とがっしりした関節やザラッとした剣ダコの感触も相まって、これから訪れるであろうモノの味を想像せずにはいられない。
「このまま、いけそう?」
「バカ、もう少しほぐすか……ローションでも使えや、裂ける」
「ローション?」
「枕元の……テレビの下の、その自販機で売ってるだろが」
「面倒だからこれでいいじゃん、そっちは男相手慣れてるだろうし、俺のは謙虚だし」
そう言いながら、一度指を口許にやり、紅い舌をトカゲのようにベロリと出しながら、唾をまぶす。
「勝手なこと言いやがって!」
だが、拒もうにも巧みに手足を押さえ込まれているらしく、身動きが取れないまま、そのぬめる指がつぷりと入り込んできた。内側の感触を確かめるようにぐるりとかき混ぜると、一気に根元まで押し込んでくる。
「あ、バカ……そんな急にっ……!」
「なに、副長さん、強引にされると感じる方? 触ってもないトコがカッチカチだけど」
「なっ……や、やかましいっ!」
カッと頬が熱くなるのを感じる。そんな性癖などあってたまるかと思うが、内側を掻き回す指に押し出されるようにして、溢れ出た汁が茎を伝い落ちてシーツを濡らす状態では、いくら否定しても説得力が無い。
「すっごく、気持ち良さそう。俺のんもヨくしてよ」
「ばっ、まだ、無理ッ……!」
「無理じゃねぇって。こっちもすっげぇ飢えてるみたいだし」
確かに、抱かれる側は久しぶりだから、飢えていたと言えなくもない……不意に、部下に抱きすくめられて『最近こっちの方、ご無沙汰でしょう?』と囁きかけられたことを思い出していた。頬に触れた彼の髪の感触や吐息を思い出して、身体の奥が仄かに熱を帯びる。銀時はふと、その反応に眉をひそめたが、こちらだって口吸いの最中に別人のことを考えていたのだから、お互い様だと飲み込んだ。大体、俺らは嫉妬するような間柄じゃない。
代わりに、片手で己のモノを握り込んだ。いまいち心許ないが、奥に芯があるのはまだ感じられた。扱き上げて奮い立たせて、相方のようにしとどに濡れるほどではないにしても、先端に滲んでいた銀色の雫を、入り口になすり付ける。それを焦らされていると受け取ったのか「まだ無理」と言っていた筈の喘ぎが、徐々に早まって、いつしか「早く」に変わっていた。
「まだ無理、じゃなかったのか?」
口先ではそう嬲りながらも、何度か押し当てては弾かれて内心、多少の焦りはあった。そのくせ、互いの体液を捏ね合わせながら、肌を摺り合わせられる感触が、やたらと心地よい。
「うるせぇ」
照れたように吐き捨てて、促すように銀時の首筋や肩に噛みついてくる仕草が、その図体や日頃の言動とは裏腹に、やたらと可愛らしく感じられる。やがて、腕が蛇のように首を柔らかく巻きしめ、耳朶に息を吹きかけるように「来いよ」と囁かれた瞬間に。
不肖の息子が暴発した。
一瞬、頭の中が真っ白になって、動きが止まってしまった銀時であったが、唖然として固まってしまったのは、土方も同様であった。数拍の間、沈黙が横たわり、男なら誰でも知っている『栗の花の匂い』がふわりと漂い始める。
「てっ、テメェ貴様! なに自分だけイってやがんだぁ!」
わなわなと震えた挙げ句、先に再起動したのは土方であった。銀時を突き飛ばして仰向けに転がすと、まだビュクビュクと吹きこぼしていたソレを忌々しげに掴み、衝動的に身を屈めていた。鈴口を啜り上げるようにして、まだ尿道に残ってる分まで搾り取るように吸い上げる。
「ちょっ、副長さん、やめっ! 直後は敏感なんだから、もっとソフトに扱って! そこ吸わないでってば!」
銀時が悲鳴をあげる間もあらばこそ、根元まで吸い込まれ、舌や口腔全体で扱き上げられた。じゅぶりと湿った音を立ててそれを吐き出し、硬度を確かめるように唇を這わせる眼は、欲情に鈍く光っていた。
「こんだけ復活すりゃ、使えるかな?」
「ちょ……いや、無理、またキそうだもん、そんな色っぽい顔されて迫られたら、ダメだわ」
「んだよ、使えねぇな。根元縛るか?」
何か紐ねぇのか、紐……と、土方が本気で周囲をねめ回し始めたので、銀時は青冷めた。
「あの、そのさっきは大きな口叩いてスミマセン、副長さんがご満足するまで、手か玩具か……なんだったら舌も使ってご奉仕しますんで、勘弁してください。俺のジュニアは打たれ弱いんです」
「なんで、正月早々ガラクタ突っ込まれなきゃいけねぇんだ。大体、その玩具代も払うの俺だろうが。それ、まだイケるだろうが。貸せ」
「貸せって、そんな道具みたいな!」
「ザキだったら黙って貸すぜ?」
「たまは、いや、坂本だって、そんな無理強いしねーのに」
ふたりほぼ同時に口が滑って、失敗った、という表情になった。顔を見合わせると、互いの熱がみるみる冷めていくのが、手に取るように分かった。
「あー……その、悪かったな」
「えーと、その、すんません」
気まずい空気が流れた。
いや、あのさ、副長さんが悪いとかそーいうワケじゃなくて、そもそも、たまは本人というか本機というか、それ自体には性欲が無い存在だから、俺を満足させたいという思いだけで動いているわけだし、そういう人形だけじゃなくって、俺が糖尿の気があってイマイチなのよく分かってくれるヤツはさ、まぁ、例えば坂本とか、なんだけど……と、銀時は釈明したかったのだが、声が出ない。
一方の土方も、いや別にそこまでガッついていた訳じゃなくて、ちょっとカッとしてムキになってしまっただけで、どうせ姫初めの相手は男といわず女といわず、その気になりゃアミダ籤で選ぶぐれぇ居るんだし、わざわざ嫌がるのを無理強いしてまでイタしたいと思ってたんじゃなく……と、言い訳したかったが、舌が口蓋に張り付いて、動かなかった。
その沈黙を、やたらとレトロな電話のベル音が破った。ふたりとも突然のことにビクッとするが、戸惑った視線を送った銀時に促されるように、土方が受話器を取り上げた。
『延長シマスカ?』
ぶっきら棒な声は、先ほどのフロントの男だろう。もう二時間経ったのかと、土方は受話器を耳に押し当てたまま部屋の中を見回し、壁に時計が掛かっていないのを知ると、代わりにベッドパネルに視線をやった。
「いや、もう支度して出る」
『カシコマリマシタ』
そういうと、向こうで計算をしているらしい気配がして、料金を告げた。
「もう帰るの?」
「続き、無理だろ」
「あー…ごめんね、フクチョーさんの」
「別に構わねぇよ」
多少は自分のせいだと気が咎めたらしく、銀時が背中から抱きついてくる。土方はそれをそのままににして、サイドテーブルの財布を引き寄せて札を数枚抜き取った。そして、枕元のパイプに手を触れると、一部がカパッと開いた。中に、カプセルのようなものが入っている。
「え、何それ」
「これで払うの。見たことねぇ?」
「無い無い。なに、その近未来システムみたいの」
「近未来っつーか……とっくに廃れて、きょうび珍しいからくりなんだけどな。空気圧で、シュッ……っと運ばれんの。釣りだってこれで受け取るんだぜ?」
「へーえ? そういえば古いSF映画でこーいうの見たことあるなぁ」
「見てろよ?」
カプセルを取り出してその中に紙幣を入れると、元に戻してパイプの蓋を閉じる。なんの映画だったっけなぁ、と銀時が記憶をまさぐっている間に、土方がパイプについていたスイッチを押した。蒸気が吹き出すような音がして、一瞬、パイプが振動する。それからしばらくそのまま待っていると、再びパイプが振動して、空気が漏れる音がした。戻って来たカプセルには、先ほどの紙幣の代わりに小銭が入っていた。
「な? 面白れぇだろ」
わざわざ振り向いて、子どもをあやすような口調で言われたのが、少しだけ神経を逆撫でしたが、気まずい気分を取りなそうと、土方なりに気を使っていることは理解できたので、ぐっと堪えた。
相手の調子に合わせて、あえて子どもっぽくこっくりとうなづいて見せると、頭を抱き込まれて、額に柔らかいものが触れた。声に出さぬまま、唇が動いて何かをささやく。そのリップランゲージは読み取れなかったが、このタイミング、このシチュエーションでなら『ごめんな』か、それに類いした言葉であることは、容易に想像がついた。
あのまま、素直に俺が抱かれてりゃ、良かったんかなぁ?
そのまま土方の胸元に顔を埋めて、呟いた。相手に聞かせるつもりは無かったし、実際に、聞こえてはいないようだった。
身体を拭い、慌ただしく身支度をする。なぜか土方が、サイドテーブル周辺を見ながら「マッチか何か、ねぇか?」と呟いたのが、銀時の意識に引っ掛かった。さっき自分で煙草吸ってたから、ライターは持参してる筈じゃねぇの? 大体、そんな浮気の証拠みたいなモン、どうして持ち帰ろうとするんだろう? だが、それについて尋ねようとしたタイミングに「忘れ物ねぇな?」という声が被さった。
「ねぇよ。俺、なんも持って来てねぇもん」
「靴下は?」
「素足」
「そうなのか? テメェ、そのまま革の長靴履いたら、匂うんじゃねぇのか?」
「ほっとけ。ヒーローの足は、フローラルの薫りなんだよ」
「何がフローラルだ、スルメの間違いじゃねぇか?」
罵りあいながら、廊下に出た。他の部屋の客は、ほとんどが泊まりで帰らないのだろう、エレベーターからフロント前を横切って、ガレージに出るまで、誰にも逢わなかった。
そういえば男同士だったよな、どっちか女役で顔隠しておくんじゃなかったっけと気付いたのは、自動車に乗り込んで、シートベルトを締めた瞬間だった。
「あ」
ふたりほぼ同時に声を出し、吹き出していた。
「まぁ、誰も見てないし」
「確かにな」
土方がアクセルを踏む。二人を乗せた車を迎え入れた街はまだ眠っておらず、華やかな灯りをまとっていた。
万事屋の真ん前まで自動車で送り届けてくれたが「あがって茶でも」という誘いは断って、帰ってしまった。照れたというよりは、屯所で待っている山崎からの『帰って来い』コールが、携帯の履歴が埋まるほどにぎっしり残っていたせいらしい。
なぜかひどく懐かしく感じる我が家に入ると、新八と神楽が子犬のように飛びついて来た。
「銀ちゃん、遅かったネ!」
「んだよ、てめーらが通報したくせに!」
「だって、ちょっと交番で絞られるぐらいで、すぐ帰ってくるだろうと思ってたんですもん!」
「銀ちゃんいなかったら、お節もお雑煮も美味しさ半分ヨ、やっぱし銀ちゃんと食べたかったネ」
べそをかいているガキふたりを見下ろして、寄り道してないで早く帰ってやれば良かったと、少しだけ心が痛む。
「悪かったな。じゃ、一緒にお節、食おうか」
「ぺっ、お節なんて、もう無いアルよ。シャンプーの匂いなんてさせて、どこに寄っていたアルか、この淫乱娘が」
「え? あ、ホントだ。銀さん、見損ないましたよ」
「え、だって、銀さんと食べないと美味しさ半分って、今、神楽ちゃん」
「美味しさは半分だけど、銀ちゃん遅いから、お節、全部食べたアル」
せっかくジンと来かけたのに、何ソレその仕打ちはと、銀時がズッコける。がっくりとうなだれている姿がさすがに哀れに思ったのか、新八が苦笑しながら、その背をさすって「お節はありませんが、お雑煮は残ってますよ。僕が作ったんで、ちょっと味はイマイチですけど」と慰めた。
それから数日後、銀時はパチンコ屋の前で、パッタリと長谷川に逢った。尋ねられもしないのに「俺、つい昨日、こないだのホテル、クビになってさ」と喋り始める。
「昨日?」
「うん、あそこ二十四時間の三交替制でさ、シフトが入ってないときは、空いてる客室で休ませてくれるから、半分住み込みみたいな感じで良かったんだけどね。違法なビデオ流してたのがバレて警察の手入れ受けちゃって、当分は営業自粛するからってよ」
銀時は、ふと土方がホテルのマッチ箱をポケットに入れている姿を思い出した。あれは、摘発の下準備として、ホテル名や電話番号を確認するためだったのか。だが、それ以上に重大なことがあった。
「長谷川さん、もしかして昨日以前までは、ずっと、そこに?」
「うん。出歩くとカネかかるからさ、ずっと客室に」
あの時、フロントに居たのが天人だったということは、土方と並んで横切った客室のどれかに、長谷川が居たかもしれないということか。いや、抱き合って善がり狂っていたその部屋の、壁一枚向こうにいた可能性もあったのだと思うと、銀時は一瞬カッと頬が紅潮し、やがて一転してすうっと血の気が引いた。ザーッと音を立てて背中を何かが下っていく音が聞こえるような気がした。新年早々、危機一髪というか、なんというか……いや、そもそも冷静に考えたら、アイツとあんな……何てことやらかしちゃったんだろ、俺……しまいに立っていられなくなり、しゃがみ込む。
「銀さん? どうしたの、貧血? それとも腹へった?」
心配そうに尋ねる長谷川の声が、やけに遠くから聞こえていた。
了
【後書き】せっかくなので別バージョンというよりも、ストーリー的に繋げてみました。あと、土銀か銀土かという問題ですが、自分的にはどうでも良かったっつーか、こいつらリバーシブルでもいいんじゃね、とか最近思っているので、いっそ、ジャンケンさせてみたり。
ちなみに、パイプでの料金支払いシステムのホテルは実在しますが、一度しか行ったことがないんで、詳細はかなりうろ覚えです。
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