鬱金香〜愛の宣言/下
「マジで怖くなったら言えよ?」
片手で胸の辺りを軽くなぞり上げた後、下履きの方へと指を這わせた。女性のなだらかな谷を無意識に期待していたが、布越しに触れたのは、隆々と屹立したものだった。だが、自分で想像していたほど、同性であることへの拒絶反応はなかった。
むしろその熱さ硬さに、自分への懸想でここまで昂っていたのかと思い知らされ、いじらしくさえ感じられる。
「さすがに若いな。もう先、濡らしてやがんのな」
沖田にとっても、他人に触れられる感触など未知のものなのだろう。自分のもっとも脆い部分を預けるということへの本能的な恐怖に、身をちろりと震わせながらも「怖くなんてなりませんよ……っ」と自分に言い聞かせるように吐き棄て、深く息をついて片手を近藤の広い背中に回し、もう片手で敷布を掴む。
「そうけぇ・・なら、いいんだがな」
大きな掌で包み込むようにして、ソレをやわやわとなぞり上げていたが、思いきったように、沖田の下履きの紐も解いて、その中に指を滑り込ませ、直接それに触れてやった。そう濃くもない柔らかい下生えの毛に包まれ、わななきながら息づいている。
「熱くなってんな。一度、抜くか? 腫れ上がって、はち切れる寸前じゃねぇか、これ」
「ァ …、…っ…そ、そんなこと、言葉で確認してくれなくても……」
敷布を掴んでいる指に、ぎゅっと力が篭った。手指だけではなく、足指までが強く折り曲げられて、ひくひくと脚全体が痙攣している。
「おい、声、我慢してんのか? 別にいいんだぜ?」
煽るように手で撫で上げ続けながらも、声を誘うように、ぞろりと、胸元に舌を這わせた。薄紅色の芥子粒のような突起が硬く膨れ上がっており、そこに舌を巻き付けて吸うと、刺激が強過ぎるのか、いやいやをするように肩を揺すって逃れようとした。
「ア、…ぅッ…」
さすがに胸元の感触に声が漏れかけたが、それでも必死に息を飲んで抑えようとする。
「初めてだったら、どうやって声だしていいのかも、分からねぇのかもな」
ふと、そう思い当たって、顔あげて目を覗き込み「……大丈夫か」と尋ねた。
沖田は大きな瞳で見つめ返して「こ、こんな声ェ、誰かに聞かれンのは厭だ」と、言葉を搾り出す。
「誰も聞いちゃねぇよ……それとも俺に聞かれるのも、嫌か?」
一度手を離し、最後に残っていた下履きを引き降ろしてやる。沖田は軽く腰を浮かせるようにして、それに協力してみせた。包まれていたものから解放されて、ソレがプルンと震えながら顔を出した。
己の腹を打ちそうな勢いを見せつけられて、すでにオッサンである近藤は内心苦笑いしたが、あえてそれを指摘することはなく、代わりに完全に身体が覆いかぶさる姿勢になり、頭を抱き込むようにして、髪を撫でてやる。
「近藤さんになら、聞かれてもかまいやせんが……」
沖田は撫でられて落ち着きを取り戻し、乱れた呼吸を少し整えた。
「そうかい……ホントに我慢してると、つれぇぞ、こっから先」
そう言うと、先走りの露で濡れた己の指を舐めてさらにツバをまぶすと、再び下腹部の方に・・・今度は幹ではなく、ぎゅぅと収縮した袋と、その向こうの縫い目のような蟻の戸渡りを伝って、その奥の菊座へと這わせた。
ほぐれていない入口の固さにためらい、その周囲をなぞりあげる。
「あ……? こ、近藤さン……」
沖田も、普段触れない場所に戸惑っているのだろう、不安そうに視線を彷徨わせていた。
「ああ、怖いだろうが、辛抱しろ……野郎の場合は、ここしかねーんだからよ」
それは、自分自身にも言い聞かせた言葉だ。
腹をくくって、濡らした指を押し込んだ。ぐっという抵抗感があって、押し戻されそうになる。
「……狭ぇな……こらぁ……無理かなぁ……」
「…あ……あッ」
緊張して体がこわばってしまった沖田だが、混乱した思考の中でも『無理かなぁ』という言葉には反応した。ここまで来て、求め続けていたものにもうすぐ手が届くという頃になって、やっぱり無理ですと撤回されるだなんて、それは殺生だ。
今、この時を逃したら、二度とこんな機会は来ないかもしれない。永遠に想い人と繋がることができなくなるかもしれない。
「……イヤだァ、する……」
その時、沖田の目に浮んでいた涙は、生理的なものだったかもしれないが、涙目で見上げて訴えられた近藤はギョッとして「するって、おめぇ……そんな無理しなくても」と、呻いていた。
「分かった、分かったから……つっ…おい、分かったから、ここ、力抜け……てめぇもキツいだろうがよ」
指を食いちぎられそうな程に締め付けられて、顔をしかめつつも、強引に指をくねらせ、奥へと押し込む。
「ンう……い、痛ッ…」
力を抜けるモンならそうしたいけど、と言わんばかりに、背中に回した手と、敷布を掴んだ手に 逆に力が篭る。
「痛いなら、やめるか?」
尋ねれば、沖田は歯を食いしばったまま、聞き分けのない子どものように、激しくかぶりを振った。
「しかたねぇのな……」
近藤はため息をつくと、指はそのままゆっくりとほぐしながらも、そこから気を逸らしてやるように、唇を重ねて舌を絡める。
「…ふ、…」
口付けるのが好きなのか、沖田は重ねられた唇に懸命に応える。
「いい子だ」
尚もしばし舌を絡めているうちに、きつく敷布を掴んでいた指も、徐々に弛んで来た。接吻に集中しているせいか、下腹部も緊張がほぐれてきて、僅かに綻んでくる。いけるかなと、指の数を増やして、動かしてみた。
弄っているうちに、内壁がぬめりを帯びていく。指先で感じるその艶かしさと、指の動きに応じて漏れる上ずった嬌声に煽られ、近藤のものも形を作っていく。
「……っ……」
本数が増えて負荷がかかったことで、指の存在を思い出したらしく、沖田は少しカラダを捩るが、それでも尚、すがるように接吻に応じ続ける。
「ン……まだ、ダメか……そろそろ、イイところに届いてると思うんだがな」
そういうスポットがあることぐらいは、衆道遊びの経験がなくても、風俗でそういうサービスがあるから、知っている。第二関節まで押し込んだ大体このへん……と、見当を付けた辺りの内側の粘膜の感触に、どこか違和感のある場所がないかと探るようにしながら、ついばむようにキスを繰り返す。
「……? っ…」
今までとなんだか違う指の動きに戸惑っているうちに、不意にある一点で疼痛を覚え、沖田は身じろぎした。次第に、下半身全体に痺れに似た感触がじんわりと広がっていく。
「……ァ、…あッ……」
反応があったことに気付いて『ここか?』と尋ねたいところだが、それを聞くのはさすがに憚られ、代わりにそこを執拗になぶってみる。
「……あ、ンぅ…っ、、む…、…ッ」
飲み込み切れない声を、合わせた唇の中に押し止めようと、強く唇をおしつけてくる。零れる嬌声を呑み込んでやるように、もう一度深く口づけてやるが、その後は唇を離して上体を起こすと、もう片手で己の着物を緩めて脱ぎ落とす。
「指2本慣れたぐれぇじゃ、無理だとは分かってんだがな……」
近藤が自嘲気味に呟くが、腕の中で悶え、のたうつ姿に劣情を掻き立てられて、近藤もそれ以上の辛抱がきかなくなっていた。
一方の沖田は、熱のこもった息を吐き、離れてしまった唇を淋しそうに見上げている。
「無理なんですかね?……俺ァ別に、もう突っ込んで貰っても構いませんぜ?」
沖田が、薄く笑って言ってみる。
「あのなぁ……明日、ドーナツクッションなしに座れなくなっても、しらねーぞ」
あくまで引く気の無い沖田の強がりにカックリ肩を落としながらも、そそり立っている己のモノを見下ろして「まぁ、こっちもその、こーいう状態なんだがな」と苦笑した。まったく、どいつもこいつも。
菊座をほぐしていた指を抜くと、沖田の両膝を押し広げてその間に腰を割り込ませる姿勢になり、それを入口にすりつけるようにする。
沖田は、近藤の熱を感じて、思わず吐息をつき、自分の緊張をほぐすために「ドーナツクッションかァ…経費で落ちやすかねィ…」などと、どうでもいいことを口走る。
「局長権限で落としてやるよ」
そう囁いて、腰を進めようとするところを、沖田が思い出したように「……近藤さン、ちょいと女々しいかもしれねーけど……」と、押しとどめた。
唐突に何事かと緊張して「……ン? なんだ?」と尋ねると、沖田は視線をわずかに外しながら「入れる前に、いっぺん、ちゃんと好きだって、言ってもらえませんかィ?」などと言い出した。やや不貞腐れた表情なのは、照れているからだろう。
何事かと構えたせいで、近藤は逆に「なんだよ、それ」と、苦笑が零れた。
「何、そんなこと今更言ってやがんだ」
だが、当たり前のようにそれに答えてやろうとして、一瞬、声が詰まる。
沖田の事は嫌いではない。むしろ「好き」という部類の感情を持っている。だが、それが彼の期待する感情そのものかということには自信がない。そして、今、ここでそれを宣言すれば、その感情の真相の如何に関わらず、その「好き」が恋情であると、見切り発車で認定することになる。
つい数日前まで、そんな自覚などなかったというのに。
それでも、ここで「好きではない」と逃げることも、口先だけで済ませることもできないのが、近藤であった。
「おめぇが、好きだぞ」
ゆっくりと、刻み付けるように、告げる。
一方、沖田の方は、自分で言い出したくせに、はにかんで俯き、聞こえないような声で「俺もでさァ」と零した。
「好きでなきゃあ、こんなことするかよ。こっちまでオッ立ててよ……おめぇだって馴れねぇこと辛抱してまで……もう言わせるなよ、そんな野暮なこと」
もっとも、世の男共の多くにとっては、それとこれとは別問題で、なにも惚れた腫れたと面倒なことを言わずとも、気軽に挿れて出して処理している訳だが。
「総悟、すこし腰上げて、息、吐け。楽にしとけよ。マジで痛ぇぞ」
こめかみにまでズキズキと響く脈動を伴うほどに硬く膨らんでいる。そのせいか既に先端が顔を覗かせているのを、ギュッと握って皮をしっかり押し下げてから、根元を掴んで入口にあてがい、改めて体重を乗せた。
「……ヤベ、キツすぎ……オイ、大丈夫か? 俺にしがみついてろ」
自分のモノが締め付けられる痛みに意識が持って行かれそうになるが、それ以上に沖田の方が辛かろうと、その手が自分に届くように、身体を倒して覆いかぶさってやった。
「ふ…、、、ッ、、ぁ」
必死で息を吐きながら、両手で近藤の体を掴む。
「……いッ…こ、近藤さんっ……」
痛い、と訴えそうになったが、そう言えば抱いてもらえなくなるかもしれないと気付いて、必死でその言葉を呑み込み、痛みを堪えながら代わりに名前を呼んでいた。
「総悟……悪ィ、もう少し辛抱しろ」
沖田に抱きつかれたまま、近藤は小刻みに突き上げて、腰を奥へと進める。
「少しは……気ィまぎれるか……?」
思いついて、片手で互いの腹の間ですり上げられている総悟のモノを握ってしごいてやると、先端から溢れている露が、くちくちと水音を立てた。それに伴って後口もわなないて、ほんの僅かずつではあるが、打ち込まれる楔を呑み込んでいく。
「ひ、ぁ…んん…っ」
刺激が強すぎたのか、沖田の悲鳴が切迫したものになり、ただ涙をボロボロと溢しながら、すがりついた。
さすがにこれ以上は……根元までは到底無理だなと、近藤は一度、腰の動きを止める。こちらも無我夢中になっていたのだろう、今さらのように沖田の涙に気付いた。その頬の筋をなめ取って、目尻を軽く吸ってやる。
改めて、唇を重ねる。触れるだけのキスでいったん唇を離し「……つらいか? もう少しの我慢だから、いい子にしてろ」と囁くと、再び口を吸った。
口付けられて一息ついたのか、沖田がボソッと「近藤さン……俺ァおかしくなっちまったのかなァ……痛ェの、大嫌いなハズなんだけど……なんかすげぇ満たされてンでさァ」と呟いた。
「んだ、んなもん……おかしかねーよ……そらぁ、アレだ。重度の恋患いの症状だな、多分」
これだけ痛い思いをさせられて、それでも満たされてるだなんて、なんていじらしいことを言うのだろう。それだけ深く自分を思ってくれているのだと思うと、改めてジワッと愛しさがこみ上げてくる。総悟の身体を抱き締めて、再び腰を突き上げ始めた。
「あッ……そ、そいつは面倒なモンに…ッ……かかっちまったなァ…」
揺さぶられながら、沖田は細い腕を回して、抱きつき返す。
本当に面倒なモンだよ、この俺が、痛くされて気持ちいいだなんて、あり得ない。こういう行為はもっと違う、例えていうなら、フワフワした甘いものだと思っていたのに。
だが、予想を裏切るほどの生々しさと痛みと共に込み上げる感情は、夢想していたものよりも圧倒的な量感をもって思考に根を下ろす。
好きだとか、命までアンタのモンだとか……それまで口先で(それでも、その時は充分に真剣なつもりで)吐いていた言葉が、血肉を与えられていく。
「まったく、面倒だな……ちっ、締めんなっ、ヨすぎて、あんまもたねぇじゃねぇか……」
近藤がボソッと呟いた言葉で、沖田は我に返った。
「マジですかィ……ッ……そいつはいいや、俺、焦らしてやりたかったんでさ…ッ」
自分だけがヨガっていた訳ではなく、相手にも快楽を与えていたと知らされて、胸が熱くなるが、それを押し隠すように、乱れた呼吸で生意気な口を叩いてみせる。
「でも困ったな……俺も、もう無理だァ…」
沖田がそうボヤいたのが聞こえているのか、いないのか。近藤は、こみ上げて来た波をやり過ごそうと、腰の動きをとめて「ああ、ちくしょうっ」と、誰にともなく罵りながら、総悟の胸に額を押し付けた。
こういう時は、えっと……なんか萎えるようなことでも考えよう。仕事のこととか、松平のとっつぁんのヒゲヅラとか、ケツ毛とか……だが、その密かな努力が実を結ぶ前に、沖田が「…っあ……」と、甘い声を漏らしながら、頭を抱き締めてきた。
「ダメだ……悪ィ、イク……ッ」
二度、三度と大きく突き上げると、一気にソレを抜きだした。己の手で受け止めようとするが、迸るモノが、沖田の腹の上にもブチまけられる。
「ちっ」
近藤はゼイゼイと肩で息をしてた。いつのまにか、かいていた大粒の汗が布団といわず、沖田の体の上と言わず、ボタボタと雨漏りのように滴っていた。
最後の衝撃で、沖田も解放されてしまい、近藤の放ったものと混ざりあうようにして自分の腹にかかって、放心している。
「せっかくだから、もう少し、色々、こう……」
近藤は、ちょっと口惜しそうにブツブツ言っていたが、思い出したように、汚れてない方の手で、総悟の頬をひたひたと叩いて「……おーい、生きてっか?」と、声をかける。
沖田は無言で近藤の手をとると、おもむろに彼が半端に受け止めて手についていた粘液を舐めとった。
「おっ……オイいいいいっ! おまっ……いいって、そんなん……ちょっと嬉しいけど、そういう論点じゃなくっ……待ってろ、桜紙かなんか、とってきてやっからっ!!」
動揺して喚いている近藤を無視して、がっちりと握った手首を離さずに、ぺろぺろと指の間まで丁寧に舐める。
「なんだったら、そっちもキレイにしてあげますけど?」
下半身を見やりながら、扇情的に唇を舐めると、近藤は「いつからそんなコトいう子に育っちまったんだ。そーいうオトナな会話を教えたのはトシか? 永倉か? あのヤロー」と、がっくりと肩を落としていた。
「いや、いい。キレイにしてもらったら、もっぺん元気になっちまいそうだ。紙で拭うから、いいよ」
そう、あやすように頭をポンポンと叩いてやってから「よい、せっと」などと掛け声をかけて起き上がろうとする。その腕が、がしっと腕を掴まれた。
「うぉう? どうした、食いたりねーのか? もうオッサンなんだから、勘弁してくれよ」
「なんか……ヤダ。あんたのモン無駄にするの」
「はあぁ? ちょっ……そういう論点じゃねぇだろうが! こんなモン汚いだろ、美味くもねーだろーがよ!」
「俺の腹に乗ってる分はァ諦めますけど。大丈夫、オッサンだから、そんなに早く復活はしませんって」
「あのなぁ、諦めるって何なの……訳わからねーコトいってんじゃねーよ」
「だから、二回戦をしようとか思ってる訳じゃねぇし、その、ちっとは労りてぇなというか」
「なにそれ、それなんてエロゲー?」
沖田の手を、掴まれているのと反対側の手で叩いて、離してくれるように促す。
近藤がいかにも困っている様子なので、沖田は「なんでィ、俺がこんなこと言うの、一生に一度の機会かもしれねーのになっ」と笑いながらも、今回は素直に引いておくことにする。
「まぁ、確かに珍しいというか、らしくねぇというか」
さすがにうろたえた自分がカッコ悪いと思ったのか苦笑しながら、ティッシュの箱を持って来て、総悟の腹の上のモノと、太股の内側も拭いてやる。下肢を拭った紙が朱色に染まったのに、少し眉をしかめて、本人には見えないように、丸めて屑篭に放り投げた。
近藤が眉をしかめたのに気付いた沖田は「…どうしたんですかい?」と尋ねながら、半身起こそうとしたが、なんとなく嫌な予感がしたのか、起き上がるのをやめ、再び寝転がった。
「ああ、いや、なんでもねぇ。寝てろ」
始末を終えると、近藤も裸のまま、総悟の横に寝転がって、掛布団を引っ張り上げる。
ふと、障子の向こうがしらじらと明るいのに気付いた。
「もう明け六ツ近いみてぇだな。少しでも寝とけ」
「……そうですかィ? じゃあ、そうしまさァ」
沖田が、近藤に寄り添って、猫のように身を丸めて頬を摺り寄せながら、その耳元に「ねぇ……近藤さん、俺、ケツ毛も愛せる気がしやすゼ」と、呼気を吹き込むように囁いた。
「そいつぁ、光栄だな……菩薩が、こんな身近に居たとはな」
近藤は苦笑しながら、総悟の身体を胸の中に収めるようにして抱き込んでやる。
「暑くねぇか? じゃあ、おやすみ」
「暑くってもいいやァ……アレ、俺、まだ酔ってんのかなァ……おやすみなせぇ、近藤さん」
ボソボソと呟くと、すぅっと寝入ってしまう。
その寝顔を見詰めて、髪を撫でてやりながら「これで、目を覚まして『酔ってたから覚えてませんでした』っていうの、無しだぜぇ?」と、独りごちた。
お妙さんのことはどうするんだとか、他の隊士らに対する体面だとか、こうなったからには責任取ってミツバ殿に改めて挨拶にでも行くべきだろうかとか、今後とっつぁんが見合いの話を持ってきたら、何と言って断ろう等々ど、考えなくてはいけない問題が山積しているような気がするのだが、さすがにドッと眠気が襲ってきて、頭が回らない。
今はただ、腕の中のぬくもりがひたすら心地よくて、愛おしかった。
(了)
【後書き】近藤×沖田にハマってしまったハルさんのために、私が近藤を、ハルさんが沖田を演じたチャットログのリライト。なんだか甘ったるい流れになったのは、ハルさん沖田が可愛すぎたせいです(真顔)。
告白編のある最初の部分と、初夜の後半は別の日に行われた別の流れだったのですが、繋げてみました。土方と山崎は、いつもの北宮さんとのメッセでのなりきり会話の雰囲気そのままです(笑)。
タイトルはハルさんにつけてとお願いしたのに、お忙しくてスルーされてしまっていたので、北宮さんと相談してものすごく恥ずかしいのを選んでみました。
なお、当作品の設定は、他の作品群とは全く別物です。予めご了承ください。
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