原 因 は 御 前
総悟が主催する季節外れの肝試しをした翌日から、俺は妙な気配と視線を感じるようになった。
後ろから抱き込まれるような気配。
躰を舐め回すようないやらしい視線。
男の荒い息づかいや、ポルターガイストなんてのもあった。
無論、誰かに相談できる筈も無く、俺は堪え忍んでいた。
そんなある日、部下であり恋人である山崎が俺に言った。
『憑いてますね…』と。
寒気がした。
山崎は昔から少しだけ霊感があるらしく、何時も総悟に『あんまりふざけてると、本当に出ますよ』と注意をしていた。
急に怖くなった俺は山崎に拝み屋を捜させたのだが、これがなかなかどうして見つからない。
どれも皆、胡散臭さ100%なのだ。
日に日に強くなる霊現象に、俺は疲れ切っていた。
「はぁ〜…」
「大丈夫ですか副長」
「ああ…なんとかな」
あったかい茶を飲むと心が和んだ。
「夜は気をつけて下さいね。服装とか」
「あ?なんでだ?」
謎の助言に意味を問うと、山崎はなかなか答えなかった。
徐々に不安が募る。
「………副長に憑いてるの…“色霊”なんです」
もしかしたらと薄々感づいていた事を言われた。
色霊とは性的な事に未練があるまま死んでいった人間の霊だ。
人間を犯すとか、性的な悪戯みたいな現象を起こすらしい。
俺は微かな恐怖を感じながらも、山崎と話す事以外為す術もなく夜を向かえた。
「…………っ!?」
深夜、俺は人生初の金縛りにより起こされた。
体が硬直して動かず、声すらも出ない。
そして、躰を撫でる気持ちの悪い手を感じた。
「………ぁ…っ」
急所をやんわりと握られ、引きつった声が微かに洩れた。
躰は確かに熱を帯びているのに、服装は乱れること等なく白い肌を隠していた。
汗で貼り付いた前髪が気持ち悪い。
「…ゃ……ま…崎」
自然と声に出たのは恋人の名前で、格好悪くても助けてほしくて、怖くてたまらなかった。
速くなる手の動きと鼓動。
動かない躰と思考。
男の手が菊座に触れた。
その刹那、声が響いた。
「十四郎!!」
障子を開けて入り込んで来たのは山崎と見知らぬ女。
女が不思議な言葉を紡ぐと、低い呻き声と共に男の気配が消え、ふっと身体が楽になる。
「大丈夫ですか?」
「ああ。それより…」
俺が視線を向けると、女はニタァと笑いお辞儀をして部屋を出ていった。
「あの人は拝み屋さんです。それも凄腕の。捜すの苦労したんですよ」
「悪かったな…」
優しく背中を撫でる手が気持ちいい。
『気にしないで下さい』とか『もう大丈夫ですよ』とか言われた気がしたが、殆ど耳に届いてなかった。
漸く落ち着いた俺は山崎に抱きつくとそのまま目を瞑って、深い眠りに落ちる。
「おやすみなさい…」
翌日、拝み屋から請求された金額は予想外に高く、半分は総悟に払わせた。
最初は嫌がっていたものの、大まかに理由を話すと納得してくれた。
「土方さん…アンタ生きてたんですねィ……残念だァ」
「残念ってなんだァ!!」
「死ねばよかったのに…」
「てめェーがくたばれよ頼むからさァァッ!!!」
昨日の出来事よりコイツの方がよっぽど危険だ。
END
【後書き】バトン回答(ブログに掲載)の等価交換として、屍姫さんに要求して書かせたSSです。やーんv 土方と山崎で恋人設定ですよ、奥さん(ハァハァ←ヤメレ
山崎に霊視能力ですか、まぁ、確かにありそうな? そして土方が幽霊に弱いのはデフォですものね。ちなみに『登場する女拝み屋はきさとさんです(爆)』・・なんだそうです(姫談)。いやー・・私が拝んでも余計に色霊を呼びそうですよ?
ともあれ、楽しいお話をありがとうございました!
|